2023年1月1日 牛谷義秀
介護保険制度が発足して今年で23年を迎えます。
高齢者がサービスを選択するという契約制度で始まった介護保険制度も、高齢化や核家族化の進行を背景に国民の間に広く定着するまでになりました。
介護支援専門員は専門職としての誇りと志を持って社会から信頼される存在として取り組んでいますが、近年地域包括ケアシステム構築の中で地域を支える担い手として社会から要請されて担う業務は介護保険の枠を超えて拡大してきています。
介護支援専門員は「ケアマネジメント」を担う専門職として、居宅介護支援事業所のみならず、施設などさまざまな事業所で活躍していますが、今後、地域共生社会の実現に向け、高齢者の支援にとどまらず、障害や児童のケアマネジメントにも目を向け、職域を広げる活動も期待されています。
最近の「社会保障審議会介護保険部会」で議論となった中で、私たちケアマネに共通した関心事は、1)利用者負担2割の対象者拡大、2)要介護1、2の生活援助サービスなどの地域支援事業への移行、3)ケアマネジメントの利用者負担、4)人材不足解消に向けた処遇改善、ICT機器の活用、「介護支援専門員の実践知の言語化」に関する事業などではないでしょうか。
厚生労働省は令和4年11月28日の「社会保障審議会介護保険部会」で、一部で行われている利用者負担2割の対象者を拡大する意向を示し、第9期介護保険事業計画期間が始まる2024年度に実施されることになりそうです。
またBPSDの出現など認知症の悪化が顕著に表れることが多いために身体介護とあわせて生活援助サービスが一体的に提供されるべき要介護1・2の利用者への生活援助サービスなどの地域支援事業への移行は次の法改正では見送られました。
さらに、ケアマネジメントの利用者負担導入も客観性・公平性・中立性の確保の困難や必要な介護サービスの利用控えなどから早期発見・対応の遅れが心配され、その結果、介護予防・自立支援へ向けた利用者に応じた多様なサービスによる支援などが阻害されることが懸念されることから見送りになりました。
一方、深刻な人材不足に対して離職を防止し、魅力ある職種として認知されるように処遇を改善し、ICT機器等を活用した業務効率化により事務負担軽減をはかるなどの環境整備は極めて重要です。
人材不足の真相を共有するためには、合格者ではなく介護支援専門員証更新者の中で実働する介護支援専門員をリアルタイムで把握すれば、実情に応じた養成対策の検討内容が明らかになるのではないでしょうか。
そこでJCMAが参画して取り組み始めた「介護支援専門員の実践知の言語化に関する事業」は、2016年6月の「ニッポン一億総活躍プラン(閣議決定)」に位置付けられ、10年計画でスタートした「適切なケアマネジメント手法」そのものです。
介護支援専門員が長年にわたり、努力して蓄積してきた知識や思考方法は介護支援専門員全体にとって大切な財産であり、その重要な財産を言語化し、経験知として共有できるように整理された「適切なケアマネジメント手法」により、経験知の浅い介護支援専門員でも質が高く、平準化された手法の恩恵を受けることができることになると考えます。
私たちが介護保険制度を検証し改善するためには、JCMAが職能団体としての組織力を強固なものにして国に物申す必要があります。
宮崎県介護支援専門員協会がまずJCMAを動かすためには、宮崎県介護支援専門員協会そのものが会員数を増やし、結果4人というJCMAの代議員数を現状維持することが生命線です。
私たちは法改正や報酬改定の議論には常に敏感であり、根拠のある意見を出していく必要があります。
会員の皆さまの声が国策に反映されるように努めて参りますので、令和5年もご指導、ご協力を賜りますよう宜しくお願いいたします。
一般社団法人宮崎県介護支援専門員協会
事務局長 岡崎浩司
会員の皆様におかれましては、年末年始に日ごろの激務で疲れた心身を休めることができたでしょうか。コロナ対応でそれどころではない会員の方もいらっしゃったかと思います。大変お疲れ様です。
コロナに振り回されるこの3年で人々の働き方や生活様式などの多様化が加速しているように感じるなか、宮崎県介護支援専門員協会の現状と課題をこの場を借りてお伝えしたいと思います。
まず職能団体の存在意義について確認をしていきます。
職能団体とは、専門的資格や技術や知識を持つ専門職の従事者らが、自己の専門性の維持・向上や、専門職としての待遇や利益を保持・改善し専門職の団結による社会貢献活動を行うための組織のことを指します。自分達の仕事、自分達の立場を守る為の組織です。もうひとつ、世の中に対して専門職としての責任を果たす為の組織でもあります。職能団体は、社会情勢を読み解きながら、現在だけではなく将来を見据えて社会貢献できる団体として発展していかなければいけません。
宮崎県介護支援専門員協会の会員総数をみると、平成30年度は1,653名でしたが、令和4年度は1,501名となり4年間で約150名減少しています。
新規入会者数は、平成28年度286名でしたが、令和4年度は72名です。令和元年度からは、4年続けて退会者が新規入会者数を上回る状況が続いています。
会員の年齢層ですが、50代が492名と最多で、全体の3分の1を占めています。60代以上の会員が393名おり、会員の高齢化が顕著となっています。10年後は実務についている介護支援専門員よりリタイアした介護支援専門員の数が上回るのではないか、そうなると魅力ある活動が実施できるのかとさえ危惧しています。
職能団体として持続可能性のある組織運営をしていくためには、これまでの発想だけでは厳しく、現役世代、特に20代や30代の介護支援専門員が入会したくなるような活動内容が必要です。さらに介護支援専門員の実務についていない有資格者にも入会してもらえるような仕掛けも必要になってきます。若い世代が入会したいと思うように入口を広げたインパクトある取り組みをする時期にきているのかもしれません。
会員増のためにおさえておく視点として、介護支援専門員自身の質の向上につながる取り組みは必須ですが、あわせて、介護支援専門員が配置されている施設や事業所の質が上がるための取組も考える必要はないでしょうか。協会が質の高い施設介護支援専門員の育成に努め、その実践がその施設や事業所のサービスの質を向上させ、例えば事故や苦情が減ったり、職員がいきいきと働くようになり離職率が減ったりすると施設長や管理者など運営サイドも喜ぶのではないでしょうか。施設介護支援専門員が今以上に評価されることで待遇面でも期待ができるかもしれません。宮崎県内には、特養95施設、老健43施設、療養型介護医療院が併せて26施設あります。グループホームは181施設、小規模(看護)70事業所あります。施設介護支援専門員にフォーカスした会員獲得への取り組みも真剣に考える時だと思います。
しかし、かく言う私も50代であり発想は年々乏しくなっております。20代、30代の若い世代の会員の皆様や施設介護支援専門員の皆様から、協会活動に対するご意見やご要望など幅広く承りたいと思います。どうぞ遠慮なく事務局までご連絡ください。
第8期介護保険事業計画の最終年度を迎える今年、保険者の取り組みにスピード感が出るかもしれません。また、コロナに対する感染症法の分類が変更になる事で様々な対応が起きるかもしれません。変化の多い年になりそうですが、どうぞお身体を大切にお過ごしください。